今年最初の記事となったが、最近の厳しい農業情勢について流通業者の立場でいろいろ考える日々である。そんな中、「契約栽培は、自分たちの首を絞めてないか?」という仮説がたびたび頭をよぎる。


 一昔前まで、まあ、10年くらい前までだろうか、雨が降れば野菜の出荷が減って相場が上がり、連休前やお盆前や正月前は、市場が休みになるということで消費者や仕事で野菜を使う人達もまとめ買いに走り相場が上がる。また寒い日がくれば鍋料理をする家庭が増えて、白ネギや白菜などの鍋商材が売れた。

 農家の人は作業の段取りを考えるために天気予報と睨(にら)めっこするのは当然だが、野菜流通に関わる人間も違う意味で天気予報の情報は大事なものだった。天気予報で晴れるか雨が降るか、寒いか暑いかなどの情報を参考に相場の上げ下げを予想して商売している人たちもたくさんいた。
 逆に言えば、上がることがあれば下がることもあるわけで、その辺の不安定さが野菜・農業業界に関わる人間にとってリスクでもあり、またはボーナス的に儲ける要因でもあった。

 農業を通して安定した事業を成り立たせるためには、安定した価格で安定した量を生産して販売することであることは、それが会社であれ個人であれ一番理想であることは明らかである。
 野菜を原料として使用する食品メーカー・漬物工場・カット野菜工場など実需者も安定した製造原価を担保するために、ここ10年くらいで契約仕入れが急増して来ている。
 安定した価格と量を生産・出荷して安定した農業経営をしたいと望む農家と、安定したコストで仕入れたいう実需者、お互いのニーズが最近の契約栽培・契約出荷・契約販売・契約仕入というものを増やして来たことは当然のことだろう。


 しかし、実際に契約販売をしている私が最近思うことは、契約栽培は、自分たちの首を絞めてないか?ということなのである。この場合の、自分たちとは、実需者以外の生産者や流通業者のことである。


 一つは、冒頭に書いたように天候による出荷量の増減があった場合でも、契約した農家や流通業者は天気を先読みして出荷すべき野菜の準備をしている。よって、市場に入ってくる野菜の量が少々減ったとしても相場に対する影響が少なくなっている。具体的に言えば、雨が降る前に必要量を収穫して冷蔵保存したりしているのである。それは質の良い冷蔵設備や冷蔵輸送の設備の普及もそれを助けている。

 昔ならば、雨が降って市場の入荷量が減った時など、どうしても工場で使う必要がある実需者は、少ない市場の商品を取り合うことになり、それにより相場が上がっていたのである。
 安定という意味では契約栽培は良い事ばかりだが、それには落とし穴があった。

 それは、"契約単価が安い"ということである。実需者も工場で製造する食品にしろ漬け物にしろカット野菜にしろ、それを販売する状況は非常に厳しいものがあり仕入れコストの削減に躍起になるのは当然のことだ。
 価格を固定して安定した単価で原料を仕入れるとなれば、契約の際にどうしてもギリギリの厳しい単価を求めてくるのは当たり前である。

 また先に述べた様に、出荷量の増減により商品が取り合いになる状況が減っているため、市場では”安値安定”の相場傾向が非常に強いのである。これは契約出荷が増えて来たからこそ現れた現象だと考える。


 このような状況をまとめると、契約販売分は、生産原価ギリギリで安く安定出荷しており、その他相場で市場や農協に出荷する分は生産原価を下回る相場で販売する状況ということが起こり易くなっているのである。


 安定した野菜の契約出荷が拡大すれば拡大するほど、さらにこの傾向は強くなるだろう。市場相場も契約単価もますます安値安定傾向に推移していってしまう。
 雨が降ろうが台風が来ようがいつでもどこでもモノが買え、家で作らなくてもいつでもどこでも好きなモノが食べられる時代だから、消費者もモノが無かったり相場が上がったら、無理してそれを買うことをせず、他のモノを買えばいいだけだ。そんな便利な社会システムがなおさら安値安定の流れを後押しする。

 さあ、どうする?

 他の人が取り組まず競合が少ない野菜を扱うか。他の人は行っていないような特別な栽培方法で安全や安心を訴えて差別化した販売方法で高値販売を頑張るか。薄利でも良いので量で勝負しようと大規模農業に取り組むか。味で勝負するか。いかにコストを下げるかと努力するか。いかに反収量を上げるかということ目指すか。ネットを含めて自分で小売りを始めるか。

 それぞれの自分にあった方法は置かれた状況により様々であろうが、簡単に契約栽培で安心する時ではないように思う今日この頃である。